本書は、そのおかめねこ“しいちゃん”を拾ってからの成長ぶり(やんちゃぶり)が綴られたエッセイ集です。動物は大好きでも、一人暮らしを始めてから動物を飼ったことがなかった群さんが、しいちゃんに振り回されているようすがなんとも可笑しい。仔猫の時期が描かれているせいか、しいちゃんの甘えん坊ぶりには驚くばかり。「猫は散歩がいらないから犬を飼うより楽」なんてことをよく聞くけれど、いやいやなかなかどうして。夜でも2時間おきに遊ぼうと顔を叩かれて起こされたり、睡眠不足になるのは必至だからたまりません。でも、邪気がないだけに、群さんも本気で怒れないのが行間から伝わってきます。
私も、インコのピーチ君をおいて泊りがけの旅行にはいけない状態がかれこれ10年続いていますから(ダンナが留守番できるときは別)、動物を飼うのってやはり気まぐれではできないなぁ、と思います。
しいちゃんを飼い始めたのは1998年のゴールデンウィークのことだったそうですから、もう9年近くになりますね。今や立派すぎるほどの大人猫。と、ここでチェックしてみたら『しいちゃん日記』という本が2006年に出版されていますね。『おかめなふたり』は、しいちゃんが初めての盛りを迎える頃までが描かれているので、その後の成長ぶりは『しいちゃん日記』で楽しませてもらえそうです。Amazon.com のサイトによると、『おかめな〜』にもたびたび登場するお隣の愛猫ビーちゃんの飼い主はもたいまさこさん、なんですね。ビーちゃんは18歳に成長しているらしい。18歳!!『しいちゃん日記』もそのうち読まねば、と思います。
具体的な内容を忘れてしまったけど、群さんが幼少の頃に接していた動物のことが描かれた『トラちゃん』は絶対のおススメ本です。子供に読ませたい1冊、でもあります。
井上靖の作品は、高校生の頃に天城出身の先輩にすすめられた『しろばんば』しか読んだことがなかったのですが、内容はまったく覚えていません。『その人の名は言えない』は、ダンスホールの花形だった夏子という女性をめぐる4人の男性の恋の鞘当の物語ですが、戦力外ともいえる、夏子の姉・明子の夫・沢木もからみ、話はどこに落ち着くのだろう…という展開。
明るく奔放そうな夏子ですが、しっくりしない姉夫婦を間近で見ていることもあってか、結婚には慎重で流されることがありません。求婚され、一度は承諾しても、心と体が100%ゴーサインを出せないとわかると、「あなたの奥さんにはなれない」と突っぱねてしまいます。結局、誰とハッピーエンドになるでもなく物語は終わるわけですが、流されることなく、寄りかかることもなく、自分の気持ちに嘘をつかずに生きていこうとする夏子には、凛とした美しさがあるように思います。
物語の時代が戦後の復興時ということに関係あるのかどうかわかりませんが、男性陣の積極的で直截な愛情表現は新鮮でした。これも、大阪が舞台だからでしょうかね? ちょうど今、姪っ子に縁談が持ち上がっていて、男性のほうがぞっこんだということなんで、それなりに真剣に読んでしまいました。
こういう作品に感想など書くのは難しい。心に抱えた得体の知れない“瘴気”、暗い衝動と言い換えてもいいものを、一度も持ったことがない人などいるのだろうか? 物心両面で、よほど恵まれた環境でないとないのではないかと思いつつ、何をもって“恵まれている”と感じるかは人間個々によって違うから、どんな環境にいても“瘴気”が生まれる可能性はあるんだろうな、とも思う。
“瘴気”はともかく、悲しかったり、つらかったりしたとき、「(自分だけが)どうして…」と思ったことなら、「ある」と答える人は多いと思う。3人の少年が、それぞれに抱えていたものは、「どうして」という切実な疑問。
第一部では、少年たちの育った環境と鬱屈が詳細に描かれているので、“瘴気”が“殺人”へと具現化してしまう心理がとてもリアルに感じられた。“こうありたいと思う自分”と“そうなれない自分”、それと向き合い、受け容れるのは、時間のかかるものだと思う。苦しいときに掛けられた言葉ひとつで絶望的にも、救われた気持ちにもなれる。
う〜ん、やっぱりわけわかんない感想になってきちゃった。
わかるのは、理由なき殺人ではなかったこと、それならばまだ未然に防げる希望が残されている、ということです。
言いがかり、とか、とばっちり、といった巻き込まれ型の犯罪は、身に覚えがまったくなくて起こることであり、被害者にはまったく非がないんですよね。
宮部さんの作品にこういう犯罪者が出てくるのも、世相の現れ、世相を憂えてのことなんだろうな、と思います。




